透析原因第1位 糖尿病腎症 Part2

みなさんこんにちは。 北習志野えんどう内科 院長のえんどうです。
今回のテーマは、前回に引き続き「糖尿病腎症」のお話しです。
糖尿病腎症の「検査方法」、「危険なサイン」、「ステージ分類」などのお話です。
今回もかみ砕いてお話を進めていくので、バッチリ学んでいきましょう!(^^)!

近年増え続けている糖尿病。
国内の患者数は約1,000万人、予備軍含めると、約2,000万人いるといわれています。
では、糖尿病の中で腎臓の合併症を持っている方がどれくらいかというと…
実に3人~4人に1人と言われています。

そして、、16000人もの人が、毎年毎年、糖尿病が原因で透析になってしまっているのです。

どのようにしたら「透析」になるのを防ぐことができるのでしょうか。
今日は「透析になる前にできること、気付くためのサイン」
などのお話をしていきたいと思います。

では、いってみましょう。

「あぁ~オレのカラダ来年くらいで透析だな~」と自分でわかることはありません。

透析になる前には必ず、透析になってしまうという客観的な指標
(=検査)が必要になってくるわけです。

では、そのために必要な検査とは…

ズバッとお答えしますと「2つ」あります。

それは…「尿アルブミン」と「GFR」という検査項目です。
これから、このふたつの項目について説明していきますが、
その前に、糖尿病腎症のステージ分類をご覧ください。
【図の挿入】 下の細かい文章は完無視してください(笑)
図の中だけ見ていただけたらと思います。

「病期」と書いてある右側に「尿アルブミン」と「GFR」という項目が見えると思います。
このふたつこそが、糖尿病腎症の「存在の有無」と「進行具合」を決めるのです。

まず初めに大切なのが、「尿アルブミン」とよばれる項目です。
「尿アルブミン」とはいったいどんなものなんでしょうか?

前回お話しました腎臓の働きで、「ろ過」というものがあります。
口からとった栄養や水分のうち、必要なものは体内に取り込み、
不要なものは体外へオシッコとして排出するという働きです。

栄養には当然「タンパク質」も含まれるのですが、
アルブミンはタンパク質を構成する最大の成分です。

つまり、アルブミンがタンパク質を構成しているともいえます。
(アルブミンは主に血管内に水を保持する働きがあります)

アルブミンの働きは、このあとお話しする「透析前の危険なサイン」につながりますので、
今は頭の片隅にでもいれておいていただけたらと思います。

わたしたちのカラダにとって、とっても大切な成分であるタンパク質。
その主要成分である、アルブミンが尿中から出ていること=「尿アルブミンの数値上昇」
となるわけです。

本来なら体内にしっかりと取り込まなければならないタンパク質が、
腎臓のろ過する働きが障害されてしまうことによって、
正常に吸収できずに、体の外にダダ漏れになっている状態。

この状態になると、「尿アルブミン」という数値が検査でじわじわと高くなってきます。
注)腎臓の障害の程度と数値の高さは正比例していきます。

では、ここで図に戻ってみましょう。

注目すべきは「第2期」です。

なぜなら、「第2期」こそが糖尿病腎症の始まり…だからです。

すなわち、尿アルブミンの値が30を越えたら、糖尿病腎症の始まりと言えます。

さらにHbA1cのコントロール7.0%以上が長い間続いてしまうと、
じわじわと尿アルブミンの数値も高くなり、「300を越えた時点」で
「第3期」へと突入してしまいます。

「第2期」と「第3期」はいったい何が違うのでしょうか?

はい。恐ろしさが全然違います。

じつは、ここから糖尿病腎症の恐ろしさが始まるともいえます。

透析導入になってしまうのを決める大切な指標 「GFR」
その大切な「GFR」が急速に低下し始めるのが、「第3期」なのです。
さらに、この時期から多い「むくみ」などの自覚症状がでてきたら、危険なサインです。

先程少しお話しさせていただいたアルブミンの働きを覚えていますか?
※アルブミンは主に血管内に水を保持する働きがある

このアルブミンの漏れる量が「第3期」くらいのレベルに達すると、
もはやアルブミンはほとんどなくなって、
そのため血管に水分を保持することができなくなってしまいます。
そうなると水分はどんどん血管の外に出てきて、「むくみ」となって表れるのです。

ざっくりですが、「GFRが急速に低下し始める」「むくみなどの自覚症状が出始める」
時期が「第3期」といえるでしょう。

しかも、それだけではありません。

この時期から少しずつですが、「タンパク質の摂取制限」が始まっていきます。
なぜなら、アルブミンの親玉ともいえるタンパク質を必要以上にとってしまうと、
ますます水分がダダ漏れになって、「むくみ」の症状が酷くなってしまうからです。

食事は人間3大欲のひとつですが、その中でもタンパク質は
肉や魚をはじめとする1日の食事でも多く目にする食材ばかりです。

このタンパク質の摂取制限が始まると、
やがては「うつ状態」になってしまう人さえいます。
それくらい食事制限は人間にとってストレスというわけですね。

GFRの悪化や自覚症状の出現に加えて、
「食事制限」までかかってくる時期こそが恐怖の「第3期」なのです。

続いて、「第4期」です。
だんだん怖い話を書いていくので申し訳ないのですが、恐いことだからこそ、
是非ともこの記事をよんでいただいているあなたには知っておいてほしいと思います。

ではいきますね。

図に書いてある通りなのですが、この時期の定義は「GFRが30未満」の状態です。
ここまでくると「尿アルブミン」の数値はもはや関係ありません。

「GFRが30未満である」 … これだけで「第4期」となるのです。

第4期になると厳密な低タンパク食にする必要があります。
つまり、「第3期」よりも食事制限が厳しくなるのです。
加えて透析療法の準備を始める時期。 これが、「第4期」なのです。

最後は「第5期」  ※別名「透析療法期」ともいわれています。
ファイナルステージともいえるこの時期になってしまうと、
生命を維持するために、もはや透析を避けることはできません。

図には「GFR」の数値が書いてありませんね。
お答えをしてしまうと、GFRが10~15が透析の目安と言えます。

ここ、とっても大切なのでもう一回いいますね。

人が透析療法を避けることのできない「第5期」
GFRでいうと10~15前後の時期です。

この時期になってしまうと食事も「透析療法食」というものになってしまいます。
味付けも薄くそっけない、食べたいものはほとんど全てたべれない。
世の中で一番キツイ食事制限こそが「透析療法食」なのです。

ここまでの話を簡単にまとめますね。

「透析原因第1位」である糖尿病腎症
毎年16000人もの人が透析導入となってしまっています。
(しかもこの数値は年々増え続けています)

糖尿病腎症の「危険なサイン」とその「検査方法」
それこそが「尿アルブミン」と「GFR」なのです。
この2つを調べることによって、あなたの今の糖尿病腎症の
「存在の有無」と「進行具合」がわかるのです。

そして万が一、糖尿病腎症があった場合は、
そのステージごとに食事制限などがついてまわってしまいます。

もしもあなたが、糖尿病腎症がご心配でしたら一度は先生と相談することをおススメいたします。

きっとあなたの助けになってくれることでしょう。

次回は、「糖尿病腎症のステージごとにおける有効な治療」
について書いていきたいと思います。
宜しくお願いします。

北習志野えんどう内科 院長 えんどう

今日の自分への問いかけ

あなたは普段は「足」の状態に気を付けていることはありますか。
足のしびれ、痛み、足がつる、などの症状があれば、
もしかしたら糖尿病からのサインかもしれません
今の時期、健康診断が多くの会社で実施されています。
もしもあなたが「血糖値」や「尿糖・尿蛋白」で引っかかった場合
手遅れにならないために、一度は医療機関受診をしましょう。
HbA1c7.0%未満を目標に(^^)/
ぜひ、一緒に糖尿病コントロールを行っていきましょう!